伊吹山(雪山登山)2・・・雪崩について
2017.03.31 Friday
6合目を過ぎると積雪量が急に増え、傾斜もどんどんときつくなる。
3/27栃木県那須町のスキー場付近で春山登山講習でラッセル訓練をしていた高校生、引率教諭の尊い命が失われた。
春の融雪期の雪山で心配されるのが雪崩発生の危険性!
今回、登山前に山麓に昔から住む老人の方に伊吹山の雪崩についてお聞きしてみた。
その方の話では50年前に5合目付近にあった山小屋が、夜間発生した雪崩により小屋ごと押し流され宿泊者を含む3人の尊い命が失われた雪崩があった事を聞いた。
その当時、伊吹山にはスキー場があり下山が遅れた御夫婦が5合目付近の山小屋に宿泊する事になり、その夜に雪崩が発生して巻き込まれたとの事。
伊吹山での雪崩対策では、雪崩止め柵を設置し雪崩の走路を登山道から谷側へ反らすなどしているそうである。
伊吹山の雪崩止め柵
雪崩が起きやすい場所は低木地、草地、まばらな植生地、斜面が30度以上(35~45度の場所はとても発生しやすい)、などは伊吹山正面登山道ではどれも該当する。それに加えて正面登山道は南面なので春先の融雪は一気に進む。
雪崩に関する基礎的知識
<雪崩とは>
雪崩とは、「斜面上にある雪や氷の全部、または一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」を指す。
(日本雪氷学会「雪と氷の辞典」)
<雪崩のすがた>
一般的に雪崩は積雪が崩れて動き始める「発生区」と、発生した雪崩が通る「走路」、なだれ落ちた雪が堆積する「堆積区」からなる。また雪崩によって堆積した雪を「デブリ」と呼ぶ。
<雪崩発生のメカニズム>
斜面に積もった雪は、
- 重力により落下しようとする力
- 地面との摩擦力
- 雪粒同士の結合力
がつりあって支えられている。
大雪によって積雪の落下しようとする力が大きくなったり、人や動物が斜面を横切って雪粒同士の結合力を弱めてしまったりすることで、つり合いが崩れて雪崩が発生する。
日射や気温の上昇や降雨で雪が融けた時にも、雪粒同士の結合力や地面との摩擦力が弱くなることで雪崩が発生する。
雪崩発生のメカニズム
<雪崩の分類>
●表層雪崩
雪粒同士の結合力が弱い層(弱層)が形成されると、弱層の上に積もった雪が滑り落ちる表層雪崩が発生しやすくなる。
短時間に大量の降雪があった場合にも、新しく積もった雪が崩れて、表層雪崩が発生しやすくなる。(3/27栃木県那須町のスキー場付近の雪崩)
●全層雪崩
融雪や降雨によって積雪と地面の間に水が入るなど、積雪と地面との間の摩擦力が弱まったときに、積雪が全て滑り落ちる全層雪崩が発生。
<雪崩のスピード>
●全層雪崩:10〜30m/s(40〜100km/h)
●表層雪崩:30〜50m/s(100〜200km/h)
*全層雪崩は自動車並み、表層雪崩は新幹線並みの速度で崩れてくる雪が押し寄せてくる。
<雪崩の破壊力>
雪崩は地面、雪面からの高さにより、密度や速度に差があるため、衝撃の圧力も高さによって異なる。
人や自動車程度の高さの雪崩の衝撃圧は、およそ100kPa〜200kPaで、これは1平方メートルに大型トラック1台分または軽自動車10台分の重さが掛かっていることに相当する。
<厳冬期と春先の雪崩の特徴>
●厳冬期:厳冬期の雪崩気温の低い厳冬期には、一度に多量に積もった新雪がその重みで崩れたり、古い積雪面から新雪が滑り落ちて、表層雪崩が発生しやすくなる。表層雪崩の特徴の一つに、前兆現象がないということが挙げられる。
●融雪に伴う雪崩:春先に気温が上昇すると、雪解け水や降雨で積雪と地面との摩擦が小さくなり、斜面の積雪全体が崩れる全層雪崩が発生することがある。全層雪崩は、雪しわと呼ばれる積雪面のしゅう曲や、雪の塊が崩れ落ちてくるという前兆現象を伴うことがある。
<雪崩の発生しやすい場所>
●ほとんどは傾斜35〜45°の斜面(スキーの上級者コースに相当)で発生し、30°以下の緩やかな斜面(スキーの中〜初心者コースに相当)や、60°以上の急斜面での雪崩は少ない。
●地面との摩擦が特に重要。樹木が少ない斜面や熊笹など滑り易い植生の斜面には注意が必要。
●雪庇(尾根や法面の雪がひさしのように張り出した吹きだまり)が崩れると、これに誘発されて雪崩が発生することがある。
伊吹山山頂にせり出した雪庇
*雪崩に関する基礎的知識:参考 国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所Web
(無雪期)正面登山道は九十九折だが積雪期ルートは6合目から山頂まで直登
8合目の傾斜
8合目
8合目から下を見下ろす
9合目の傾斜
9合目
山頂部への最後の急登
山頂部から下を見下ろす
山頂部到達
つづく
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