体で覚える記憶法4
2017.10.29 Sunday
幼稚園の頃、補助輪無しで自転車に乗れた時の喜びや感動は、今でも当時のことを思い出すと感動の記憶としてリアルに甦ります。しばらく自転車には乗っていませんが体で覚えた記憶も失われていません。
体で覚える記憶は主に小脳や大脳基底核という脳部位を使って長期記憶として蓄積されていきます。
例えば自転車に乗れるようになるために習いはじめは、大脳皮質運動野という運動命令を下す脳が直接、自転車に乗るために必要な体の動きをコントロールします。
「体で覚える脳」 小脳・大脳基底核
言ってみれば頭で考えながら体を制御(コントロール)している状態なので動きもぎこちなく、運動結果として転倒などの失敗も繰り返します。
さらに練習を積み重ねて行くと、いちいち考えなくても無意識に体が動くようになり、ついには転倒もせずに自転車に乗れるようになります。いわゆる、「体で覚える」長期記憶が脳にインプットされた状態となります。
「体で覚える」ことが出来るようになるのは、「小脳の学習」という回路があるおかげです。
自転車を乗るのに必要な体を動かすための運動命令は、大脳皮質運動野から手足を動かす筋肉(自転車に乗るのに必要な筋肉)に命令が下り動作しますが、
大脳皮質運動野からの運動命令は、誤りや失敗(自転車で転倒してしまう動きなど)の運動命令も含むすべての運動命令が、自転車に乗る筋肉に伝えられるので運動の正確性、精緻性に欠けてしまいます。
大脳皮質運動野からの運動命令は脊髄を通り筋肉に送られますが「小脳」にも同時に送られます。
「小脳」は大脳皮質運動野から送られてきた運動情報(命令)の中で失敗情報(例えば自転車で転倒する動きの情報)などを選り分け、失敗情報の神経伝達効率を長時間にわたり抑える回路(長期抑圧)で、失敗情報を伝えなくさせます。
このような仕組みで、小脳では間違いの元となる情報(間違いの運動動作のインパルス)を長期抑圧(神経伝達を抑え)して、
間違い情報(失敗する動き)だけを動作の伝達回路から消去し、
正しい運動動作を再び大脳皮質運動野に送り返し、
その正しい運動動作の命令が、大脳皮質運動野から各筋肉に送られるので、
動作が洗練されて正しく、正確な動作が出来るようになるのです。
(大脳皮質ー小脳 運動ループ)
この正しい運動動作の回路が小脳に蓄積され、「体で覚える」長期記憶となります。
もう一つ「体で覚える」脳に大脳基底核があります。
大脳基底核も大脳皮質運動野とつながり、運動の計画、なめらかな動きをするための運動制御、運動を始めたり、中断する機能など、運動学習にも機能しています。
大脳皮質運動野からの運動情報は小脳同様、大脳基底核にも送られます。
大脳基底核の線条体という脳部位は、大脳皮質運動野から情報が入ってくる入口ですが、
正しい運動(正しい運動動作)をした時にはその伝達回路に、
ご褒美として中脳の黒質から大脳基底核線条体にドーパミンが分泌され(報酬回路)、
正しい運動が強化される仕組みになっています。
(大脳皮質ー基底核 運動ループ)
大脳基底核の学習強化 ドーパミンによる報酬回路活性化
参考文献:脳と心のしくみ 池谷裕二 新星出版社
ドーパミンは目的を達成した時、楽しい事をしている時、ほめられた時などに分泌される快楽物質ですが、
例えば、正しい運動が達成され時などにドーパミンが分泌され快感を感じるため、
その正しい運動・動作を再び(繰り返し)行いたくなり、正しい運動が強化されるのです。
*ドーパミンなど脳内物質については後日、説明します
こうして小脳では長期抑圧による運動学習回路、大脳基底核ではドーパミン(報酬回路)による運動学習の強化がなされ、「体で覚える長期記憶」が出来上がるのです。
「運動学習」大脳皮質ー小脳ループ・大脳皮質ー基底核ループ
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