行動・体験・体感

2019.12.24 Tuesday

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    12月22日、故郷の愛知県豊山町で行われた最後となった「イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式でのイチローの最後のメッセージは印象的だった。

     

    「いろいろな情報はスマートフォン一つですぐ調べられ頭に入れられる時代になった。世界が小さくなったように思えるが、外に出てわかることがある。体験して感じてほしい。当たり前のことが決して当たり前でないことに気づき、価値観が大きく変わるような経験をしてほしい。」と、

    自ら行動を通し体験して体感することの大切さを述べていた。

     

     

     

    生物学的に動物(人間のルーツ)は「動く生物」との如く、取り巻く環境のなかで身体運動(行動)を行ってきた生命体だ。

     

    ヒトの脳という側面から「行動を通し体験して体感することの大切さ」のエビデンスは、

    ヒトの脳は進化的に古い旧脳(脳幹・小脳・大脳基底核)の上に大脳新皮質がのっている構造となっていて、旧脳(脳幹・小脳・大脳基底核)は身体活動、身体運動(出力)に深い関係をもつ脳部位であること。

     

     

    このヒトの脳の構造からも分かるよう、旧脳から派生し後付けで大脳新皮質を発達させて来たことは生物は本来、身体運動(行動)を重点に作られ、それから身体感覚(入力)と身体運動(出力)のバランスを発展させて来たことをうかかがわせる。

     

    しかしヒトは、他の生物と違い大脳新皮質という思考・演算機能を持つ強力な武器を身に付けたがゆえにその機能(思考回路)が反って仇となり、その産物である常識・概念・観念等が身体感覚からの入力にフィルターをかけて感覚能力を不純なものとしてしまった。

     

    本来人間の脳は先の構造的特徴からも行動/運動(出力)重視に作られている。

    その例として勉強方法も教科書を復習するよりも、問題を解く(出力)を繰り返すほうが脳回路への定着力がよくなることや、

    笑顔を作る(出力)と自然と愉快になる(笑顔という表情の出力がその行動結果に見合った心理状態をつくる)こと、

    就寝も普段は眠いから寝るのでなく就寝姿勢(行動/出力)とることでそれに見合った内面(眠気)が形成され眠ること等。

     

    米デューク大学のクルパ博士の実験では、ネズミがヒゲを積極的(能動的)に動かし(身体運動=出力)モノに触れた(感覚神経=入力)時と、ヒゲを受動的に(身体運動=出力)なしでモノに触れさせた(感覚神経=入力)時の感覚神経の活性度は、積極的に身体運動からモノに触れた時の方が10倍も感覚神経が活性化した。

    この事からも感性(感覚神経)は、身体運動や行動という(出力)から発信した方が活性化しやすい特性がある。

     

    参考:脳には妙な癖がある 扶桑社新書 池谷裕二著

     

    イチローの言う、「外に出てわかることがある。体験して感じてほしい」は、

     

    行動を通し体感しながら感性を磨いて行くことは脳生理学的にも順当な方法であることを裏付けている。

     

     

    2019.1.30  木曽駒ケ岳 千畳敷カール